節分と落花生

そろそろ豆まきの季節ですね。
今年の節分は去年と同じ、一般的な2月3日です。
立春前の節分は旧暦で言うところの大晦日にあたりますので、旧暦では今は押し迫った年末といった感じの時期ですね。
その辺りは昨年の「おしえて!ほろみん」の豆知識コーナーでご紹介しましたので、よろしければ併せてご覧ください。

節分には「年越しそば」で邪気払い | そば処霧立亭

北海道では落花生

節分の豆、もう用意されましたか?
ご存じの方も多いかと思いますが、北海道では落花生を用意します。

節分の豆はどっち? 北は落花生、東西は大豆 – ウェザーニュース

ネット上でみかけた、北海道教育大学旭川校の菅宮健(役職名は不明)氏の2000年に発表された論文「節分行事の変化の質問紙調査による研究」によれば、

「大豆」は、北海道が26.7%、東北が58.8%で、関東から九州・沖繩までは78~100%であった。中でも、近畿・九州は90%台で、関東は100%である。「小豆」は中部で9.1%、中国・四国で14.3%であり、その他の地方はゼロであった。「落花生」は北海道で100%、東北で82.4%であり、関東から九州の範囲では、中部が27.3%と比較的高いが、その他の地方は10%台以下であった。「その他の豆類」は北海道が13.3%、東北が5.9%であり、その他の地方はゼロであった,「菓子類」も北海道が多く33.3%であり、その他の地方は0~18%であった。まくもので「その他」と回答した比率は、中部が18.2%と高い値であり、その他の地方は0~7%であった。

節分行事の変化の質問紙調査による研究(北海道教育大学旭川校 菅宮健)

抜粋してみるとこんな感じ。
(設問は、【豆まきに使うもの→「大豆/小豆/落花生/その他の豆類/菓子類/その他」】からの複数回答の集計)

●大豆
北海道26.7%
東北58.8%
関東から九州・沖繩まで78~100%
—-
 関東 100%
 近畿・九州 90%
●落花生
北海道100%
東北82.4%
関東から九州(中部以外)10%台以下
—-
 中部 27.3%<比較的高い
●菓子類
北海道33.3%
その他の地方0~18%

北海道は確実に落花生。それ以外に大豆が少し。
大豆より菓子類が多く、しかも他地域よりも突出しているのが特徴的です。

複数回答での大豆26.7%に関しては、開拓で入植した人たちの子孫が出身地域の風習を受け継いで続けていたり、新たに移住してきた方などが故郷の方法で続けているのかもしれませんね。

北海道も昔は大豆だった

調査の中で「節分にまくものがいつ頃何に変わったのか」ということも調べられており、北海道も1960年頃までは大豆をまいていたことも記載されていました。

北海道と東北では、大豆から主に落花生に変化したことが分かる。
(中略)
変化の時期を北海道と東北で比べると、北海道の方が早い時期に大豆から落花生へ変化している。北海道が変化した時期は早い方で1951年、平均して1961年であり、東北は早くて1958年、平均して1972年である。

節分行事の変化の質問紙調査による研究(北海道教育大学旭川校 菅宮健)

なぜ落花生に変化した?

北海道ではなぜ落花生なのかという話のとき、大抵は「雪の多い地域なので雪の上でも見つけやすく、まいた後に拾って殻をむけば衛生的に食べることができる」からというのが主な理由のようです。

参考にしたこの論文もなぜ北海道で大豆から落花生に変化したのかというのが主題となっています。

大豆→落花生への変化に北海道の暮らし方が影響しているのではないかという記述の中にあった下記の一文は、個人的に妙に納得しました。

ストーブの交換、薪や石炭の補給などでスト一ブのまわりはいつも汚れやすい。またストーブのまわりには雪で濡れた長靴や手袋などが置かれることも多かった。

(中略)

1950年代なかばから広まった北海道の居間中心型住宅でも、居間が台所と一体化していたため、そこではスリッパを履いて暮らしたであろう。節分は北海道ではちょうど厳寒期に当たる。冬の暮らしの中心である居間で、豆がまかれることになる。スリッパで歩く床の上に豆がまかれる。床が汚れるからスリッパを履くのであり、同じ床にまかれた豆も、拾って食べるには汚いと感じるようになったであろう。たたみのように素足で歩き、じかに座り、寝ころぶこともあるところにまかれた豆との違いである。これが、大豆から落花生へ変化する要因になったと考えられる。

節分行事の変化の質問紙調査による研究(北海道教育大学旭川校 菅宮健)

なるほど、北海道では居間にストーブが置かれ生活の中心が居間となり、豆も居間でまかれる。薪ストーブが主流の時代であれば衛生面からというのは至極納得。実際、石油ストーブでも長靴を持ってきて乾かすのも雪国あるあるですもんね。
とはいえ、中略以降はちょっともやもやする点もありますが・・・(素足で歩いたところの豆であればそのまま食べられる・・・?えぇ・・・;まぁ、3秒ルール!的な?)

北海道的合理性

論文には記載されていなかったのですが、大豆から落花生への変化が「衛生面」を軸にしたものであることや、菓子類をまく統計で北海道が突出していることなどを見ていて、個人的には良い意味での「北海道の合理性」を感じました。

雪に埋まったら見えなくなって拾えないし、床に落ちたのを食べるのもあれだし・・・同じ豆なんだから殻のついた「落花生」でいいよね?

というか、殻(パッケージ)がついた豆なんだったら「○○豆」の小分けパックのやつでいいじゃん?おいしいしw

だったらいろいろ入ったお菓子のやつがいいな♪

豆とかチョコとかいろいろ入ってるやつ買ってくればいいよね?みんなで好きなの食べられるし♪

みたいな感じなのかな~?

関係ないかもしれないけれど、なんとなくこの割り切り方というか合理的思考が北海道での結婚式の「会費制システム」に通じる雰囲気があるような気もしました。

邪気払いもしっかりと!

今さら感満載ですが、節分に豆まきをする理由はなんでしょう。
農林水産省のウェブサイトから引用します。

【節分に豆をまく理由とは】
節分(2月3日)には、「鬼は外、福は内」と豆(いった大豆)をまいて、邪気を祓った後に、年齢の数だけ豆を食べて、1年間の幸せを祈ると言われています。
これは、米と同じエネルギー源で霊力を持つとされる豆をまくことで、病や災いを祓い、更にその豆を食べることで力をいただけると考えられたからです。
この考え方が中国の古い鬼追いの行事「追儺(ついな)」と合わさり、広まったとされています。

「節分」の日に豆をまくのはなぜですか?また、豆まきに使う大豆の栄養についても教えてください。:農林水産省

そして、忘れてはならない「年越しそば」。

旧暦では春分の日が新年の始まりとされていたので、春分の日の前日の節分に食べるそばは「年越しそば」と呼ばれていました。(詳しいことは去年の記事をご覧ください)
旧暦方式に「年越しそば(今は「節分そば」と呼ばれています)」を食べ、しっかり邪気払いをして新しい春から始まる1年を迎えてくださいね!

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