庚申そば

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

早速ですが、1月2日(月)は2023年の最初の庚申の日です。

庚申の日とは

庚申の日は、十干と十二支の組み合わせで、60日ごとにやってくる庚申(かのえさる)の日。
カレンダーに書いてあるのを見たことがあるような気もしますよね。
庚申の日というのは、中国から平安時代に伝わった「三尸説(さんしせつ)」を元にした庚申信仰が由来となっています。

現在までに伝わる庚申信仰(こうしんしんこう)とは、中国道教の説く「三尸説(さんしせつ)」をもとに、仏教、特に密教・神道・修験道・呪術的な医学や、日本の民間のさまざまな信仰(民間信仰)や習俗などが複雑に絡み合った複合信仰である。

庚申信仰 – Wikipedia

虫?

道教では、「三尸(さんし)」と呼ばれる3匹の虫が人間の体内にいると考えられており、60日に一度めぐってくる庚申(こうしん)の日に眠ると、この三尸が人間の体から抜け出し天帝(いわゆる閻魔大王)にその宿主の罪悪を告げ、その人間の寿命を縮めると言い伝えられていました。

唐代の中国の書『太上除三尸九虫保生経』にある三尸がこんな姿。

どうみても虫・・・じゃないような・・・

上尸中尸下尸の3種類があり、人間が生れ落ちるときから体内にいるとされる。
(中略)

●上尸(じょうし)
人間の頭の中、つまりは脳に居り、首から上の病気を引き起こしたり、大食を好ませたりする。
『太上除三尸九虫保生経』では道士の姿で描かれる。

●中尸(ちゅうし)
人間の腹の中に居り、臓器の病気を引き起こしたり、宝貨を好ませたりする。
『太上除三尸九虫保生経』では獣の姿で描かれる。

●下尸(げし)
人間の足の中に居り、腰から下の病気を引き起こしたり、淫欲を好ませたりする。
『太上除三尸九虫保生経』では牛の頭に人の足の姿で描かれる。

三尸 – Wikipedia

庚申の日の夜に寝ると、これらの虫が体内から抜け出て「こいつはこんな悪さをしましたよ」と天帝に告げ口しに行き、それによって宿主である人間は寿命を縮められてしまう。

というのも、宿主である人間が死ねば三尸は人間から出て自由に動くことができるようになるため、人を病気にしたり、さらには天帝に悪行を報告して命を縮めたいがために人間に悪さをさせるように体内から仕向けるようなこともするらしいのです。

いわゆる腹の虫が治まらないだとか虫の居所が悪いだとか、ネガティブな気分や感情を表現するのに体内に「虫」がいるような表現を使うのも、この三尸と関係があるそうです。

病気を起こしたり、庚申の日に体を抜け出して寿命を縮めさせたりする理由は、宿っている人間が死亡すると自由になれるからである。葛洪の記した道教の書『抱朴子』(4世紀頃)には、三尸は鬼神のたぐいで形はないが宿っている人間が死ねば三尸たちは自由に動くことができ又まつられたりする事も可能になるので常に人間の早死にを望んでいる、と記され、『雲笈七籤』におさめられている『太上三尸中経』にも、宿っている人間が死ねば三尸は自由に動き回れる鬼(き)になれるので人間の早死にを望んでいる、とある。

三尸 – Wikipedia

眠気覚まし

三尸は人間がねむらなければ身体から抜け出ることができず天帝に報告にいくことができません。
つまりは眠らなければ寿命を削られることもない、ということなので、庚申の日の夜は寝ずに夜を明かす「庚申待」という習わしが生まれました。

日本には古くから伝わっていたものと考えられており、平安時代から行われ、当初は公家や僧侶がやっていて、すごろくや詩歌管弦を楽しんでいた。『枕草子』にも庚申待の話が登場する。江戸時代に入ってから、民間にも広まった。

庚申待 – Wikipedia

江戸時代になって民間にも広まり、一人では眠気に負けてしまうからと「庚申講」と呼ばれる集まりをつくって徹夜する行事になりました。
とはいえその実態は夜通し食べたり飲んだりして盛り上がる場だったようです。

まぁ寝なければいいんですもんね(笑)

庚申待ではとにかくその日は徹夜で過ごさなくてはならないため、眠らないように、顔にスミを塗ったり、胡椒をかけたり、太鼓を叩いたりしたという。また籠城中の兵士達も庚申待を行っており、カフェインが入っている茶を飲んで眠らないようにした。

庚申待 – Wikipedia

そんな庚申待の時の食事として食べられたのが「庚申そば」だったそうです。

【庚申そば】
60日目に回ってくる庚申の夜(御申待ともいう)に清めのためと眠気覚ましに食べるそば。
この夜は、仏家では帝釈天および青面金剛、神道では猿田彦を祀って寝ないで徹夜する習俗があり、夜食にそばが盛んに食べられた。

『蕎麦の事典』(新島 繁):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部

ご飯やうどんなどに比べてそばはGI値が低めなことはかなり知られています。
もしかして、江戸時代の人もそばが血糖値が上がりにくく眠くなりにくいことが分かっていたんでしょうか!?

「低GI食品」を選べば眠くならない

食後の血糖値の上げやすさを示す指数に「GI値」というものがあります。GI値の低い食品を意識して選べば、血糖値の急上昇を抑えることができ、食後の眠気を防げるかもしれません。

昼食後の眠気対策に!GI値を活用する、眠くならない食べ物&食べ方 | からだにいいこと

低GI食品としてそばを選ぶ際は小麦を含む割合の少ない十割そばや二八蕎麦などが良いですね。

2023年の庚申の日

ちなみに2023年(令和5年)の庚申の日は下記の通りです。

  • 2023年1月2日(月)
  • 2023年3月3日(金)
  • 2023年5月2日(火)
  • 2023年7月1日(土)
  • 2023年8月30日(水)
  • 2023年10月29日(日)
  • 2023年12月28日(木)

日頃、品行方正な皆さんは三尸も報告すべきことがなくて困っていると思うので、徹夜しなくて大丈夫だと思いますよっ♪