そばの品種

「理想のソバ・ほろみのり」 幌加内で生まれた新品種
収量1.3倍、品質も安定、品のある味

幌加内町では1997年(平成9年)からそばの安定生産を目指してそばの品種改良に取り組み、同時登熟性(*1)を持つ多収性品種(*2)の育成を試みました。

(*1) 同時期にそばの実が熟し、収穫できる状態になること。一度に収穫に適した実のみを収穫でき、また早めに熟した実が先に落ちてしまうことも減るため、多くの収穫量が得られる。
(*2) 収穫量が多い品種

農水省によれば人口2,000人(当時)ほどの小さな自治体が農産物の品種改良に成功して登録するのは全国的にも珍しいとのことです。
この幌加内で独自に開発された新品種は、町の名前を一部取り「ほろみのり」と名づけられ、2001年(平成13年)に品種登録申請し、2004年(平成16年)に農水省より種苗法に基づく品種登録を受けました。

従来種である「キタワセソバ」などは同じ時期に種をまいても開花期や収穫期にばらつきが出て、成熟が早い株は収穫前に実の脱粒が始まってしまいます。

「ほろみのり」は収穫までの期間が70日~100日と従来種より20日ほど短く、収穫期もはぼ同時に迎えることができます。
このため脱粒が少なく、収量が1.3倍に増えたほか、品質のムラが少なくなります。
また、食味は素朴な味のキタワセと比べ甘味があり、癖がなく上品な味と注目されています。

ソバに詳しい俣野敏子信州大名誉教授(農業生態学)からは「栽培する上では理想に近いソバで、開発できたのは画期的だ。有限伸育性の品種はロシアなど世界各国で研究されており、今後はこうしたソバが主流になるだろう」と評価されています。

(2002年(平成14年)1月7日(月曜日)北海道新聞夕刊より引用。)

当店のそば粉は「ほろみのり」

幌加内町で誕生した新品種ほろみのりは、もともと風味や甘みがキタワセよりも強く、生産の段階でも倒伏しにくいなどの特徴のある品種で、蕎麦屋の立場としてもとても魅力のある品種です。 

しかし、当初は全体的な実の大きさが比較的小さく、キタワセと比べるとそば粉に出来る量が少ない傾向にありました。
また、実が小さいことでどうしても蕎麦の甘皮部分が多くなってしまい、渋みが出てしまいがち。
製粉業者の技術でほろみのりの良いところを引き出すことは可能でしたが、やはり手間隙がかかることもあり高価なそば粉でした。
そのため、当店でも限定販売はしておりましたが、通年での提供はなかなか実現できない日々が続きました。

そんな中、当店と隣家のそば生産農家さんとで「霧立そば製粉」という製粉所立ち上げ、磨き・選別・脱皮・製粉・蕎麦打ちなどの工程を工夫することで「ほろみのり」を使用したそばの通年提供を実現させたいと考えていました。
ほろみのりも次第にとても良質なものが収穫されるようになったこともあり、平成20年度からは当店でもご提供する手打ち蕎麦を「ほろみのり」に切り替えました。
これもひとえに農協職員の皆さんやそば生産農家の皆さん、農業技術センター・役場の職員の方々など蕎麦の生産に携わる皆様の日々の努力のおかげです。

全国に名の知れてきた「幌加内そば」ですが、偽装の心配も無く、安心安全な本物を味わえるのはやはり産地「幌加内」のおそば屋さんだと思います。
町内の各店でも様々な形で「ほろみのり」の提供をしておりますので、ぜひともお試しください。