湯桶読み

“トウ”か“おけ”か

そば湯はお好きですか?
そば屋でそば湯を入れて提供される器を「湯桶」と呼びます。
一般的に赤や黒の漆塗り(を模した物)で円い筒型のものや角形のものが用いられます。

さて、この「湯桶」、読み方が二通りあって「湯桶(ゆとう)」と読めばそば湯の入った器、「湯桶(ゆおけ)」と読めば風呂で使う桶になります。

湯桶読み

湯桶(ゆとう)と湯桶(ゆおけ)の読み方の違いは、音読みと訓読みにあります。
湯桶(ゆとう)は、訓読み+音読み。湯桶(ゆおけ)は、訓読み+訓読み。

この「湯桶(ゆとう)」のように漢字2字の熟語の上の字を訓読み、下の字を音読みとする読み方を「湯桶(ゆとう)読み」と言い、日本語における熟語の変則的な読み方の一つです。

湯桶読みの例

(訓読み:ひらがな、音読み:カタカナで表記)

  • 丼鉢(どんぶり+バチ)
  • 鶏肉(とり+ニク)
  • 生麺(なま+メン)
  • 屋台(や+タイ)
  • 湯気(ゆ+ゲ)

本来は音読みをする単語ですが、同じ分野で用いる同音異義語や似た音の言葉が存在するため、あえて慣用で湯桶読みを行う事例もあります。

市立(シリツ→いちリツ)私立(シリツ→わたくしリツ)

このように正式な読み方ではないが、誤解を避けるためにあえて湯桶読みにするような読み方は「説明読み」と呼ばれています。

重箱読み

湯桶読みの逆バージョンで、「音読み+訓読み」となるパターンを「重箱読み」と言います。

重箱読みの例

(訓読み:ひらがな、音読み:カタカナで表記)

  • 極細(ゴク+ぼそ)
  • 菜箸(サイ+ばし)
  • 仕事(シ+ごと)
  • 地鶏(ジ+どり)

新蕎麦(シン+そば)も重箱読みです。
この場合、蕎麦(そば)は「熟字訓」とよばれる当て字の一種です。

蕎麦を「そば」と読むのは”熟字訓(じゅくじくん)”と言われる読み方で、
熟字訓とは漢字1字に読み方をあてるのではなく、熟字(2字以上の漢字の組み合わせ)に訓読みをあてた読み方のことです。
熟字(2字以上の漢字の組み合わせ)に訓読みをあてた読み方だから、熟字訓(じゅくじくん)です。

蕎麦の読み方と意味、「そば」と「きょうばく」正しいのは?

頑張れ中学生

そばの楽しみの一つであるそば湯に欠かせない湯桶(ゆとう)からピックアップしたお題でしたが、いろいろ興味深かったです。

湯桶と重箱、どちらも漆器なのが不思議な共通点だったり、鶏肉(とりニク→訓音)、豚肉(ぶたニク→訓音)と湯桶読みする肉類、なぜか牛肉(ギュウニク→音音)はうしニクじゃなかったり。
ここに書いた以外にも、へぇ!となる話がいろいろあって面白かったです。

この湯桶読みと重箱読みは中学3年生の国語で習う内容のようで、ググっていると中学生用のテストや入試などのための解説などが数多く出てきました。
「さすが中学生向けにわかりやすく解説してあるし、面白いな」と軽い知的好奇心であちこち読みあさっていましたが、「でも…これって自分が中学生なら絶対面白いと思ってなかったな」と気づいた瞬間、テストも入試も関係ない大人という立場でヘラヘラと面白がっているのが現役中学生に申し訳ない気分にもなっちゃいました;
でもまぁ、つくづく勉強ってそんなもんなのかもしれませんね。
図らずも受験シーズン真っ只中の時期です。中学生の若人たちよ、試験のために頑張って覚えたこと、きっと面白いと思える時が来るから頑張ってね~!

編集後記

記事内で「湯桶」「ゆとう」と連呼しておきながら…
実は、当店では「蕎麦湯入れ」と呼んでいます。

そんな店でのお手伝いもしっかりしてくれている現役中学生である息子に「湯桶(ゆとう)」について聞いてみたら…

店主(父)

(息子)、「湯桶(ゆとう)」って知ってる?

息子(中2)

ゆとう? あー「湯桶」ね、知ってる知ってる。一回習ったわ

店主(父)

それって何か知ってるの?

息子(中2)

なんだったかなぁ…?あれ?(。-`ω´-)うーん

店主(父)

わからんの?(笑) みたことないの?(笑) 

息子(中2)

わかるか!

店主(父)

毎日見てる、これ知らんの?(笑) 
( ´・ω・)⊃■(湯桶) スッ

息子(中2)

………

店主(父)

………

\爆笑/

息子(中2)

これ、湯桶って言うんだ(笑)

こんな父と子の蕎麦湯のような温かいひとときが生まれました(笑)
笑うそば屋にゃ福来たる!

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