
30日なくても、晦日(三十日)そば?
晦日とは旧暦でその月の末日のことを指します。
この晦日には「みそか」「つごもり」など複数の読み方があり、それぞれに少しずつ異なる背景があります。
旧暦では、その月の始まりである1日は新月にあたります。
月の満ち欠けを基準に日付が進むため、月の長さも一定ではありません。大の月は30日、小の月は29日とされ、自然のリズムに寄り添う形で暦が組まれていました。
そして、月がもっとも満ちる十五夜(満月)を過ぎると、月は次第に欠けていきます。やがて月の最終日には、細い月も完全に姿を消し、夜空から“隠れる”状態になります。これを「月籠り(つきごもり)」と呼び、漢字では「晦(つごもり)」と書き表しました。晦とは本来、“月が籠もって見えなくなる”という月相を示す言葉なのです。
一方で「みそか」は「三十日(みそか)」という日付の古い読み方に由来します。
旧暦では大の月の末日が30日であるため、三十日=月末という感覚が自然に広まりました。
ただし、ここで誤解しやすいのは、「大の月が30日だから三十日=晦日になった」という単純な関係ではないという点です。
実際には、“晦(つごもり)”という月相語と、“三十日(みそか)”という日付語が、旧暦の構造の中で結果的に同じ“月末”を指すようになり、自然に重なっていったというのが歴史的に正確な理解です。さらに語源だけをたどれば、晦日は“新月の前日”を指します。旧暦では新月が1日なので、晦日は必ず29日または30日になります。
一方、現代の太陽暦で月相だけを見ると、たとえば2026年2月なら16日が“月相としての晦日”にあたりますが、これは旧暦の日付とは別の話です。
つまり、三十日(三十一日)という日付に合わせて晦日そばを食べるのではなく、語源としての晦=月籠りと、文化としての晦日=月末の区切りが重なり合って、今の「晦日そば」という習慣が続いているのです。
旧暦の時も2月は短かった?
旧暦の時代、2月が特別に短い月だったわけではありません。
その年の暦の組み立てによって、大の月(30日)になったり、小の月(29日)になったりしました。
旧暦は月の満ち欠けを基準にしていたため、1年は354日ほどになり、現在の太陽暦より約11日短いのが特徴です。
このままでは季節がどんどんずれてしまうため、旧暦では閏月(うるうづき)を挿入して調整していました。
閏月とは、特定の月をもう一度くり返す“余分な1か月”のことで、たとえば「閏2月」「閏8月」のように、年によって入る場所が変わります。
こうして旧暦は、月のリズムと季節のリズムの両方を保とうとしていたのです。
2月が短いのはヌマ暦が起源?

2月が短くなったのは、古代ローマの暦法に由来するとされています。
最初期のローマの暦(ロムルス暦)には、そもそも農閑期の1月と2月は暦が存在しませんでした。
1年は農耕の始まる春に始まり、10か月しかなかったのです。
その後、ヌマ王の時代に改暦(ヌマ暦)が行われ、現在のように1月と2月が追加されました。
ただし、この時代の2月は1年の最後の月とされていました。
ローマでは、「奇数は縁起がよい」「偶数は不吉」と考えられていたため、1か月の日数は基本的に29日か31日に設定されました。
しかし、年末に置かれた2月だけは特別で、祓いや清めの儀式を行う月とされていたため、不吉とされる偶数でも構わないとされ、28日になりました。
ここに、現代の「2月だけが短い」という特徴の源流が見えてきます。
閏年登場:ユリウス暦

紀元前46年、ユリウス・カエサルが暦を大改革し、太陽暦(ユリウス暦)が導入されます。
- 1年=365日
- 4年に1度、1日を加える「うるう年」を導入
- その追加日は 2月に入れられた
つまりユリウス暦では、
- 平年:2月は28日
- うるう年:2月は29日
という現在に近い形が確立します。
なぜ2月に追加したのかというと、ヌマ暦以来、2月が“調整の月”だった伝統がそのまま引き継がれたためです。
閏年のルールが精密化:グレゴリオ暦

1582年、ローマ教皇グレゴリウス13世がユリウス暦を改良し、現在のグレゴリオ暦が誕生します。
ユリウス暦は「4年に1度のうるう年」だけでは誤差が蓄積し、季節が少しずつずれてしまう問題がありました。
そこでグレゴリオ暦では、うるう年のルールが精密化されます。
- 4で割り切れる年はうるう年
- ただし 100で割り切れる年は平年
- しかし 400で割り切れる年はうるう年
この調整によって、季節のズレがほぼ解消されました。
そして、うるう日の追加先はやはり2月のまま。
理由はユリウス暦と同じく、2月が“調整の月”であるという古い伝統が続いていたためです。
古代ローマへ思いをはせる晦日そば
月相と暦の重なりが生んだ晦日そば。
いつの間にか旧暦の話からローマの暦へと続く長い時間に流されていましたね。
古代ローマを思いながらすする一杯は、いつもより少し豊かな味わいを運んでくれそうです。
