二八そばから三色そばに
桃の節句に飾ったひな人形を4日の雛納めの日にしまう前にそばを供える「雛そば」という風習については、以前ご紹介しました。
この雛そば、初めは普通の二八そばだったようですが、江戸時代にひな飾りの調度品などもだんだんと華やかになっていく中で雛そばも菱餅の色に合わせた三色そばが使われるようになりました。
とはいえ、三色そばは雛そば用に開発された物ではなく、雛そばよりもやや早く文献には登場していたようですね。
縁起の良い陽数
雛そばに三色そばが好まれたのは、華やかだからというだけではなく、三色であることが重要です。
3月3日は3が重なる「重三」の日で、陰陽思想などにおける陽数、縁起の良いとされる奇数が重なっています。
1月1日のお正月、3月3日の上巳の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕の節句、9月9日の重陽の節句など、縁起の良い陽数の重なる日が節句やお正月などの重要な暦行事になっています。
(1月7日の人日の節句だけは、1月1日の元日がすでにあるので月と日が違う数字になっているようです)
三色そばは縁起の良いとされる陽数「3」のパワーを含んだ行事食ということなのですね。
さらに「木」「火」「土」「金」「水」の五要素に由来すると唱えた「陰陽五行説」の要素を盛り込んだ五色そばも雛そばとして用いられたりもしましたが、雛そばとしていただくのは、「重三」の意味から考えると三色そばが本来のあり方のようです。
日常にもたくさんある「3」
陽数とされる奇数の中でも、特に生活の中で接する機会が一番多いのは「3」ではないでしょうか?
日本三大○○とか、御三家、三つ巴などの何かしらでひとまとまりを表すのに用いられる傾向にあります。
プリンも3つで1パックになってるよ♪
ことわざに登場する数字にもやたらと「3」がつくものが目立ちます。
- 朝起きは三文の徳
- 石の上にも3年
- 仏の顔も三度まで
- 三人寄れば文殊の知恵
- 三顧の礼
- 三度目の正直
「3」は神聖なものや儀式などにもよく見かけます。
- 三種の神器
- 三々九度
- 七五三
- 三位一体
日本神話に登場する導きの神とされている「八咫烏」の脚も3本ですし、そういえばコロナ封じで一世を風靡した妖怪アマビエの脚(ヒレ?)も3つでした。
「3」は安定
日本人が「3」を好む理由の一つには、「3」には「満つ/充つ」に通じる音があり、不足なく満たされるめでたい印象があることが上げられるようです。
また、「3」はカメラの「三脚」などに代表されるように、安定する印象があります。
鉄橋や鉄塔などに使用されるトラス構造は、多角形の中で一番強度が大きいとされる三角形を基本単位としてその集合体で構成されています。とりわけ地震の多い日本では、三(角形)は安定した強度を得ることのできる安心の数字なのだと無意識レベルで感じている可能性も考えられます。
三色そばが手に入らないときは
とはいえ、三色そばをなかなか身近で見かけることがない場合もありますよね。
そんなときでも縁起の良い「3」のパワーを得るために、
- 三色そばのように麺を3つに分けて盛る
- 薬味を三種類用意してみる
- 乾麺を3種類用意して、三色そばならぬ三種そばにして食べ比べしてみる
など、工夫して楽しみながらお召し上がりいただくと3のパワーも得られて良いことがありそうな予感がします♪
試してみてね~♪